「少年は残酷な弓を射る」はどうしても分かり合えない息子と母親の関係を描いたスリラーです。
生まれつき感情をほとんど外に出さず、愛情をほとんど感じさせない息子ケヴィンに対し、母のエヴァはなんとか親子の絆を築こうとしますが、うまく行きません。そんな二人の溝を印象付けるシーンをピックアップしてみました。
少年は残酷な弓を射るの名場面
ある日、壁中に世界地図が張られている母親の部屋に入ってきたケヴィンはその光景を冷たい目線で見つめます。ケヴィンに見られていることに気づいたエヴァは彼に自分の趣味を説明しようとします。
息子ケヴィン:These scribled squares of paper. They are dumb.
落書きした四角い紙なんか馬鹿みたい。
scribled paperは「落書きされた紙」、「いたずら書きされた紙」という意味です。
母エヴァ:Everybody needs a room of their own. You have your room. This is the mother’s room. I can help you make your room special, if you’d like.
みんな自分の部屋が必要なのよ。あなたに自分の部屋があるようにこれがお母さんの部屋なの。もしよければあなたの部屋も特別な感じにしてあげようか。
Everybodyは「みんな」という意味ですが動詞の活用では3人称単数形として扱われるのに対し、所有格になるとtheirと複数形が使われることが多々あります。
息子ケヴィン:What do you mean, “Special”?
特別ってどういうこと?
What do you mean~で「~ってどういうこと」、「~ってどういう意味」という質問文になります。
母エヴァ:Well, so it looks like your personality.
あなたの個性が出るようにするってことよ。
息子ケヴィン: What personality?
個性ってどういうこと?
母エヴァ: I think you know what I mean.
どういうことか分かっているでしょ。
息子ケヴィン: They’re dumb.
(地図なんて)馬鹿みたい。
Theyはここでは最初に登場した「These scribled squares of paper」を指しています。Theyは「彼ら/彼女ら」という意味のほかに「それら」といった複数形の物に対して使われることが多々あります。
このシーンでケヴィンは母エヴァの感性を真っ向から否定し、また、母親の言うことを理解しつつも、すべて「どういう意味?」と聞き返します。話相手を意図的にイラつかせようとしている傾向がこのときからすでに見られています。
次のシーンではエヴァがケヴィンに算数を教えるシーンです。ケヴィンは知っているにも関わらずわざと間違った答えを連発します。
エヴァ:Okay. Let’s work on our counting. What comes after 3?
じゃあ、数字を数えてみましょう。3の次はなに?
What comes after~で「~の後に来るのはなに」という意味になります。
ケヴィン: 9
エヴァ:What comes after 7?
じゃあ7の次は?
ケヴィン:71……..1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30,31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40,41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50.
ケヴィン:Now, can we quit?
もうやめてもいい?
エヴァ: There. You can add that together if you think you’re so smart.
じゃあこれ。全部足してみなさい、そんなに自分が賢いと思ってるなら。
この後、ケヴィンはわざとウンチをもらしてエヴァを怒らせます。怒ったエヴァはケヴィンを投げ飛ばしてしまい、そのことでケヴィンは腕を骨折してしまいます。しかしそれさえもケヴィンにとっては母が罪悪感を感じることに喜びを覚えてるといった様子でした。
二人の関係に向上が見られないまま、ある日エヴァは赤ん坊を身ごもっていることに気づきます。次のシーンは赤ん坊がどうして生まれるのかをケヴィンに説明するシーンです。
エヴァ:So, the daddy bear plants his seed in the mommy bear and it grows into an egg.
お父さん熊がお母さん熊の中に種を植えるのよ。そうするとそれが卵の中で成長していくの。
ケヴィン:Is this about fucking?
それってファックのこと?
エヴァ:Do you know what that means?
あなたはその意味を知ってるの?
ケヴィン: The boy puts his pee pee in the girl’s doo doo.
男の子のちんちんを女の子のあそこに入れるんでしょ。
直訳すると、pee peeは「おしっこ」、doo dooは「うんち」という意味です。
エヴァ: Well…Haven’t you ever wished you had somebody around to play with?
でも、誰か一緒に遊ぶ人が近くにいたらいいなあって思ったことないの?
ケヴィン:No.
ない。
エヴァ: You might like it.
気に入るかもしれないじゃない。
might+動詞で「~するかもしれない」という意味になります。
ケヴィン:What if I don’t like it?
もし気に入らなかったら?
What if ~で「もし~だったら?」という疑問文ができます。
エヴァ:Then you get used to it.
そしたら慣れるわよ。
ケヴィン:Just because you’re used to something…doesn’t mean you like it. You’re used to me.
慣れたからって好きだってことじゃないじゃん。お母さんだって僕に慣れてるじゃん。
エヴァ: Yes, well… In a few months we’re all gonna get used to somebody new.
うん。でも数か月もしたらきっとみんなが新しい家族に慣れるわよ。
ケヴィンは母親が自分のことを好きじゃないことを知っているのがこの会話から読み取れます。また、それを問われてもエヴァは否定もせずに会話を流しました。この頃にはお互いに苦手意識を隠すことも放棄しだし、溝の深さが埋められない様子が伝わってきました。