「彼女を見れば分かること」は脚本がすばらしすぎる名作です。セリフに無駄がなく、また序盤で出てきたセリフが後につながったりと、綿密に練られているのが分かります。そこで優れた脚本による英語のセリフのやり取りを紹介します。
「彼女を見れば分かること」の名場面
まずは冒頭のシーンから見て行きましょう。
冒頭ではドクター・キーンの家にタロットカードの占い師、クリスティーンがやってきます。いきなりクリスティーンはドクター・キーンの星座や性格などをずばりと言い当てます。それを一通り聞いたドクター・キーンは男性に関する悩みを打ち明けます。以下はそこからの会話です。
ドクター・キーン:Lately I’ve had the feeling that my life is going to change. It’s a very strong feeling. Can you see that?I’ve been having… dreams.
最近、自分の人生が変わるんじゃないかってフィーリングがあるの。すごい強いフィーリングなんだけど、そのことは分かる? よく夢を見るんだけど、、、
*lately+現在完了で「最近~している」の意味になります。
クリスティーン:What kind of dreams?
どんな夢?
ドクター・キーン: If there’s bad news, I don’t want you to tell me.
もし悪い話だったら、言わないで。
(ここでドクター・キーンの高齢の母が姿を現します。)
ドクター・キーン:I’m sorry. There’s usually a nurse, but she had to take the day off.
ごめんなさい、いつもなら看護婦が来るんだけど、今日はお休みで。
ドクター・キーン: Just tell me about this year.
今年のことを見てみて。
クリスティーン: You seem to be very concerned with finding a man. Someone who you can depend on. omebody who you can share your life with…. And there is a man who will be interested in you.
あなたは男性を見つけることをとても心配しているみたいね。誰か頼れる人、自分の人生をシェアできる人、、、あなたに興味を示す人がでてくるわ。
ドクター・キーン: The man you mentioned before? The one at work?
さっき言ってた男のこと? 職場の人?
クリスティーン: No, this is somebody you’ve never met. A younger man.
いいえ。まだ会ったことのない人、若い人よ。
ドクター・キーン: Well, the man at work is younger than I am. A couple of years. He’s… tall. Fair skin. Has brown eyes.
職場の男も私よりは若いわ。2つぐらいだけど。彼は背が高くて色白で茶色の目をしてて
クリスティーン: No.
違うわ。
ドクター・キーン:You sure it’s not somebody I already know?
本当に私の知ってる人じゃないの?
クリスティーン: This is a new man.You know, Dr. Keener,none of this is written in stone. I mean, these are your cards today, but…nothing happens without you.
新しい男性よ。ドクター・キーン、別にこれは決まったことじゃないの。今日のタロットカードが示してるだけで、あなたが何もしなければ何も起こらないわ。
none of this is written in stone は、直訳すると(今話した)これらの話のうちどれも石に書かれているわけじゃない、という意味です。
クリスティーン:What time is it?
いま何時かしら?
ドクター・キーン It’s a quarter to 2:00.
2時15分前。
クリスティーン: I’m gonna leave before I turn into a pumpkin.
遅くなる前に行かないと。
*I’m gonna leave before I turn into a pumpkinは、「カボチャになる前に帰るわ」という意味です。
ラストのシーンでは キャロルが刑事の姉キャシーが担当した事件の被害者カルメンについて推測を始めます。孤独に死んでいった女性カルメンと孤独に暮らしている自分を照らし合わせている名シーンです。
キャロル:I’ve been thinking some more about your friend Carmen.
私、カルメンについてもうちょっと考えてみたの。
to have been thinking は現在完了進行形で継続して現在まで「~してきた」ことを表現しています。キャロルはずっとカルメンについて思考を巡らせていたのです。
Maybe she found the love of her life, and they had a child.
おそらく、彼女は生涯の相手を見つけたのよ。それで二人は子供を生んだ。
But after the baby died,
でも赤ん坊が死んだあと、
they were incapable of consoling one another.
二人はお互いを慰めることができなかった。
to be incapable of ~ing で「~する能力がなかった」、「~することができなかった」という意味になります。
The burden was too much to carry alone…
(子供を失った苦しみを)一人で抱えるにはあまりにも重荷だったのよ。
and impossible to share. It tore them apart.
かといってシェアすることもできなかった。そのことが二人を別れさせたの。
So Carmen moved away to a kinder place away from here,
それでカルメンはここより居心地のいいところに引っ越したの。
but she wasn’t able to rebuild her life.
でも彼女は自分の人生をやり直すことができなかった。
be able to +動詞で「~することができる」になります。この場合は過去&否定形のため、「できなかった」となります。
So she reached out to the father of her child.
それから彼女は赤ん坊の父親である彼と連絡を取った。
They talked on the phone for months, but she was terrified of hope.
二人は何ヶ月も電話で話した。でも彼女は希望を持つことさえ怖かった。
It took her a long time to build up the courage… to meet with him face to face.
彼女が彼と対面する勇気を振り絞るためには長い時間がかかった。
Finally, she returned to Los Angeles…
それでようやく彼女はロスに戻ってきた。
to be near him, try to pick up the pieces.
彼の近くで、やり直すために。
She moved into that house, prepared for the big night.
彼女はあの家に引越して、二人の特別な夜のために準備をした。
But the evening, it went badly.
だけど、その夜、上手くいかなかったの。
Or what’s worse, it went well at first, then it went badly.
あるいはもっとひどくて、最初は上手くいってたけど、後から上手くいかなくなったとか。
The end of the night, it was clear to her…
それで夜が明ける頃に気づいてしまったの
That nothing she could do…
もうどうすることもできないって。
could revive that baby…or their love…
赤ん坊を蘇らすこともできなければ、愛も取り戻せないって。
or kill the pain… or do anything but make her feel alone.
痛みを消すこともできなければ、孤独を感じること以外なにもできないって。
Maybe she left early in the morning while he slept.
おそらく早朝、まだ彼が寝ている間に彼女は彼の家を出て行ったの。
She made up her mind about her future on that long walk home.
そして家までの道のりを歩いている間にこれからのことについて決心したの。
to make up one’s mindは「決意する」、「決心する」といった表現です。
When she arrived…
家に着いたら、
she went through all of her things…
自分の全ての所持品を取り出して。
and threw them out, erasing herself quietly behind closed doors…
自分を静かに消し去るように、それらを捨てたの、締め切った家の中で。
Like most people live their lives.
ちょうどほとんどの人がそうして(締め切った家の中で)生きるように。
キャシー:I was wrong about you being a detective. You should be a writer.
あなたに刑事になればいい、なんて思ってた私が間違ってたわ。あなたは作家になるべきよ。
キャロル:Oh, well, only a fool would speculate about the life of a woman.
そうね、女性の人生を推測できるのなんて馬鹿な人ぐらいなものよね。
I mean, maybe she was just tired of dead ends.
多分、彼女はキリのない人生に疲れ果ててたの。
Phone calls that were never returned.
電話をかけても、折り返さない。
*to be + 過去分詞の受動態を使っています。
Promises that were never kept.
約束は守られない。
*受動態
Tripping over the same stone.
同じ石につまづくような。
I guess we’ll never know what she was thinking.
おそらく、彼女が何を考えてたかなんて私たちには知るよしもないわ。
It’s just as well.
むしろそのほうがいい。
These are the things that can’t be shared.
(世の中には)人とシェアできないものっていうのがあるのよね。
人生の孤独を描いたとても悲しいシーンでした。ほかにもすばらしいセリフがたくさんある映画ですので、何度見てもその度に新しい発見があるでしょう。出演者の演技のレベルも高いので、演技、セリフ、ストーリーと色んな意味で楽しめる作品です。